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株式会社ゲイズ 矢野雅也のblogです。

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ヨコハマメリー


秀逸な映画だと思う。
僕は幼稚園時代と中学から高校までを横浜で過ごし、
メリーさんにはたびたび遭遇している。
当時はまだ40代だったと想像するが、白塗りの顔にくっきりと描かれたアイライン、当時はほとんど黒に近い紫色の口紅で、シルバーの髪ベルサイユを思わせるドレスで、気がつくと人形のようにすぐそばに存在した。
あるときは横浜眦膕阿療稿癲△泙燭△襪箸は伊勢佐木町の喫茶店で、まっすぐに背中をのばし、微動だにせず大きく目を見開いて座っていた。
幼稚園時代の伊勢佐木町の町はよく覚えていて、不二家の2階で食べるペコちゃんサンデーや、有隣堂書店、博雅のシュウマイ、そして真っ赤に塗られた、ほていや百貨店、縄のれんの牛鍋屋など、
僕にとっては、ここが大都会だった。
メリーさんによく遭遇していたのは中学生時代、JohnJohnという、ホットドッグ屋、ウィンピーハンバーガー、馬車道珈琲屋を行き来し、喫茶リボンヌ、ロック喫茶ムーティエ、塾。まあ不良一歩手前ぐらいですかね、その後は黄金町や若葉町にも足を踏み入れるのだけれど、その頃至る所でメリーさんと遭遇していたような気がする。
その風体から、僕は彼女の事を大金持ちのマダム(黄金町あたりの怪しげな店の経営者)だと思っていて、なぜなら眦膕阿瞭蛋サロンでも、伊勢佐木町の路地裏のボローい喫茶店でもよく出会うのだ。どんなときもまっすぐに背中をのばし、全く存在を消していた。喫茶店のボックスでふと気がつくと真後ろからじっと見つめる視線に気づいて、思わずぎゃあ!と叫んでしまった事も。
映画にはメリーさんと関わりのあった人たちが登場し、メリーさんと、彼女が町の風景だった時代の横浜を語る。
シャンソン喫茶を経営するオカマの歌手のおじさんは、いつも顔や髪をきれいに整え、自らの過去とメリーさんの人生を重ね合わせてゆく。
映画は、目線の統一という事が重要だ。
映画「告白」は、狙いかもしれないが、一つの出来事を様々な人の目線で描く事によって、結局何も伝えていない。
典型的な内容の無い映画になってしまっている、
特にドキュメンタリーにおいてはなおさら大切。
僕にとってのメリーさんが街の風景の一部分であったのと同じように、人々はメリーさんの思い出を追って、かつて自分が過ごした横浜へと、カメラを伴い時間を遡ってゆく。彼らの若かりし頃の風景が、それぞれのの言葉で紡ぎだされてゆく。外人と愚連隊のたむろする24時間営業の根岸屋。唖、白人専門、黒人専門、この3種類の娼婦たち、バンドによるにぎやかなJAZZの演奏。2階には座敷があって、芸者がいた、その芸者か語るメリーさんとの喧嘩の思い出。
この映画は、昭和の時代の横浜の風景を語る語り部たちの物語である。写真で登場するメリーさんは、年をとって、背中が曲がり、小さく縮んでしまっている。あの凛とした面影は残ってはいるものの、化粧をしたチンドン屋のような姿に変わっていた。
人々はそんな彼女に親しみと、憐憫を覚え、彼女のプライドを慮りつつ、そっと手を差し伸べようとする。
この、人を思いやる心が、そして夢の国のような往時の横浜が、この映画のテーマとして浮かび上がってくるのだ。
最後の最後まで、メリーさんに寄り添うのは末期の癌を煩うシャンソン歌手の男性だ。自分の母のように、大切に、大切に思う気持ちを歌に込める。
カメラはとうとうメリーさん本人を映し出すのだが、彼女は何も語らない。そしてカメラも何も聞こうとはしない。
謎に包まれたままのメリーさんの人生を暴いて何になるのか。
シャンソン歌手に手を引かれた、小さな老婆は、もはや白塗りの姿をしていない。どこにでもいる老人として、その余生を老人ホームの仲間と過ごしている。
映像が伝えられる事の中でも最上級のもの!
ほめ過ぎだろうか、ぜひたくさんの人に見てほしい。
| 見た映画 | 01:39 | comments(0) | trackbacks(0)
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